むしろ、誰にもわかってほしくない/20130517








誰かが僕らの関係を一言で表したとしたら、それはチームメイトか、仲間か、あるいは友とでも言うのだろうか。なんにせよ僕はそれを聞いた途端、吹き出してしまう自信があった。だってチームメイトや仲間ならともかく、言うにこと欠いて友だって? そんな訳がないでしょう。あり得ない。僕は彼ら五人となんか、友なんて可愛らしい間柄には到底なれない。いや、もしかすると光栄なことに彼らの方は僕をそのように思っていてくれるのかもしれない。お前はもう友だちだって、少しくすぐったそうに言ってくれるのかもしれない。けれど僕は、それを認めたくない。違う、そんな関係になりたかったのじゃない。違うんだ。「教育係なんて死んでも嫌です」。その一言を絞り出すのにどれだけの勇気が必要だったか。「黄瀬くんの、教育係なんか、絶対にやりたくありません」。それは僕のはじめての我儘で、はじめての反抗だった。片足が引っかかってなんとか一軍においてもらえているような僕の要求を飲んでもらえるなんて、そんなおこがましいことはこれっぽっちも思っていない。だってほら、実際に、僕は駄々を捏ねた子供をあやすようなやさしい声に、丸め込まれてしまっている。僕なんかが彼に教えてやれるようなことは何もないのだという主張にだって、甘言を弄されればそれで終いだ。おそらく彼はそれが本当の理由ではないことに気づいている。彼は僕の気持ちも何もかも知った上で、なおお前がやれと言うのだ。それでも僕は僕の中にある、汚ならしい感情を吐き出してしまうことはできなかった。そうしたとき、僕はいよいよ戻れなくなると思った。ただのチームメイトにでも、ただの仲間にでも、ただの友にでもなりたかったのじゃない。僕は五人の才能にただただ焦がれた凡人だ。彼らのようになりたくて、けれどそれが一生叶わないことを知って惨めったらしく嫉妬しているような人間なのだ。どうして彼らのような恵まれた人間たちと、友だなんて思われたい? 僕は彼らと対等な存在として認められることだけを願ってこれまでを過ごしてきたというのに。僕の葛藤は、僕にしかわからないだろう。お前が、と鼻で笑われることをおそれている僕の気持ちなんて、僕だけがわかっていればいい。



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