ひとたび息を吸い込むと、冬の冷えた空気が肺に刺さる。つきん。 ラビの指の間から冷えた砂が零れ落ちていく。さらさらと流れていく砂を、目で追った。それはやがて地面にすべて零れ落ち、微かな零れ残りも風でひゅんとどこかへ飛んでいってしまった。足元に残る瓦礫も同様に、消えていった。残ったのは自分とラビのふたり。いつかも見たような光景に、俺は僅かに身を震わせる。デジャヴなんて今更感じたくもない。 「これからどうする」 自分の声も冷えていた。 それはなんの所為だろうか、それがわかる日はいつかくるのだろうか、 「どうしようもない」 返ってきた声も冷たかった。ラビはすんと鼻を鳴らして、ぼろぼろになったバンダナを床に力なく捨てた。 「だってアクマのウイルスなんか、浄化できるんじゃなかったのか。なのに骨も残らない。これはどういう訳だ、これはどういう訳だ、」 だっても何も、弾丸を撃ち込まれたときにはもう死んでいたんだ。それじゃあどうしようもないだろう。 そんなことは、きっとラビも理解している。だからどうしようもない。 「すごいよ、もう、どうかしてるよ。オレは」 形はもう残らなかった。手の、指の隙間から落ちていく砂は灰だ。それすらも風に攫われていって、跡形もなくなってしまった。棺桶に、何を詰めればいいのか。そんなことでも考えていたんだろう。 「仕方ないから、オレはかわりを探すことにする」 「そうか」 引き止める要素はどこにも転がっていなかったので、俺は大人しくラビを見送った。瓦礫の山に突っ込んで、怪我でもなければいいのだが。 |