銀の血/080125

ひとたび息を吸い込むと、冬の冷えた空気が肺に刺さる。つきん。
ラビの指の間から冷えた砂が零れ落ちていく。さらさらと流れていく砂を、目で追った。それはやがて地面にすべて零れ落ち、微かな零れ残りも風でひゅんとどこかへ飛んでいってしまった。足元に残る瓦礫も同様に、消えていった。残ったのは自分とラビのふたり。いつかも見たような光景に、俺は僅かに身を震わせる。デジャヴなんて今更感じたくもない。

「これからどうする」

自分の声も冷えていた。
それはなんの所為だろうか、それがわかる日はいつかくるのだろうか、
「どうしようもない」
返ってきた声も冷たかった。ラビはすんと鼻を鳴らして、ぼろぼろになったバンダナを床に力なく捨てた。


「だってアクマのウイルスなんか、浄化できるんじゃなかったのか。なのに骨も残らない。これはどういう訳だ、これはどういう訳だ、」
だっても何も、弾丸を撃ち込まれたときにはもう死んでいたんだ。それじゃあどうしようもないだろう。
そんなことは、きっとラビも理解している。だからどうしようもない。
「すごいよ、もう、どうかしてるよ。オレは」

形はもう残らなかった。手の、指の隙間から落ちていく砂は灰だ。それすらも風に攫われていって、跡形もなくなってしまった。棺桶に、何を詰めればいいのか。そんなことでも考えていたんだろう。



「仕方ないから、オレはかわりを探すことにする」
「そうか」
引き止める要素はどこにも転がっていなかったので、俺は大人しくラビを見送った。瓦礫の山に突っ込んで、怪我でもなければいいのだが。


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