だるい。 「てーをのばしてー……ぎゅうー」 だるい……。 「……とー、パンナコッタさんはー……こどもをだきしめてー」 全身を覆う倦怠感。 これだけはどうしても拭い去れない。 根気じゃあとても無理だ。 そして慣れない。 だるいのと同様に痛みが増えた。 「だきしめてー……キスーをーしたー……」 ありえない。 有り得ない。 どうしてあんなところで満足するの。 まったく男という生きものは。 ……僕も同じだけれど。 「パンナコッタさんはー、だーけーどおこりっぽいからー」 足の先についた指を動かすことさえ億劫だ。 シーツがかさかさしているのはわかるのに。 それ以上のことはわからない。 例えば自分以外の人間だとかそんなもの。 「はたけーを……あらした、うさぎにはー……まよわずほうちょうふりおとすー……」 だるい、(だるい)。 足も持ち上がらなければ腕も上がらない。 なんてことをしてくれたんだ。 なんてことをしてくれたんだ。 なんてことを、してくれる。 僕は何か、間違ったの、? それって誰が教えてくれるの。 何か知っていたような気をしていたの。 まず愚かでした。 「パンナコッタさんは…………こどもーをーまもるたーめなーら、」 まず、 「どーんなことだってー」 おろかで。 この手を広げれば掴めるような気持ちだった。 ほしいものが。 掠りはしたのだろう。 交わりもしたのだろう。 そしてそれだけだったのだろう。 「パンナコッタさんはー……」 今、見上げるこの天井が落ちてくれればいいのに。 今、乗っかったベッドを支える床が抜け落ちてくれればいいのに。 今、僕を観察するみどりの瞳が潰れてくれればいいのに。 「なあなあ、なんで、泣いてんの?」 「いま、……」 やさしいパンナコッタさんが僕を仕留めてくれればいいのに。
あかくなく
080717 情事後。 |