14:低空飛行





「じゃあ、兄さん。また明日ね」

殺風景で、どこか冷たい感じの残る病室内に、オレンジ色の光が落ちる。目の前には、同じ色に染まる兄さん―――僕がぼうっとしている間に、段々と日も暮れていたようだ。
「明日はお花持ってくるから。いい香りのするやつ」
座っていたベッドから立ち上がり、帰ろうとしたときだった。廊下から急いだ足音が聞こえ、病室の前で止まったかと思うと、ドアががらりと開いた。

「大佐!?」
「……アルフォンス、か?」


―――もう終わりだ。

大佐は僕を見て「アルフォンス」と言った。短かったけれど、その瞬間、兄さんに成り済ますという僕の無謀な試みは終わりを迎えた。





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