「じゃあ、兄さん。また明日ね」 殺風景で、どこか冷たい感じの残る病室内に、オレンジ色の光が落ちる。目の前には、同じ色に染まる兄さん―――僕がぼうっとしている間に、段々と日も暮れていたようだ。 「明日はお花持ってくるから。いい香りのするやつ」 座っていたベッドから立ち上がり、帰ろうとしたときだった。廊下から急いだ足音が聞こえ、病室の前で止まったかと思うと、ドアががらりと開いた。 「大佐!?」 「……アルフォンス、か?」 ―――もう終わりだ。 大佐は僕を見て「アルフォンス」と言った。短かったけれど、その瞬間、兄さんに成り済ますという僕の無謀な試みは終わりを迎えた。 back |