(090817/メモログ)たとえば丸ごと食べられてしまってもころす自信がありますよ、だって
「いってえ、」痛い痛いと呻きながら押し入って「なんか、なんかないすか!」挨拶も抜いて何よりも先に珍しく敬語で喋った、とエドワードは思った。
「……なんかって、なんだね」エドワードが想像していたとおりの反応だったけれど、「それは察しろ!」気にせず右足のズボンをたくし上げて「これ! これ!」血がじわじわ滲んできた傷跡を指した。なんだかもうまともに説明する気は失せていた。
「なんだ、転んだのか? 鈍くさい奴だな」
「うっさい! なんか、あー、絆創膏とか、ないわけ!」
早くしないとオレの血があんたの部屋の床を汚染するぞ! と脅すと、漸くロイは動いた。いつにも増して怠惰な風情だった。
「絆創膏なんて持っている訳ないだろう、この私が」
「何、それは、嫌味ですか? どっちの意味ですか?」
ごちゃごちゃうるさいな、とロイは眉を寄せてエドワードを抱き上げる。
「ぎゃっ!」
「少し黙ってるとかできないのか?」
「あんたが突拍子もないことし出すからだろ!」
少々乱暴めにデスクの上に下ろすと、ロイは少し屈み込むようにしてエドワードの擦り剥けた膝を舐め上げた。そこには少しの躊躇いもまるでなかったので、逆にこちらが恥ずかしくなってしまうのが癪だった。
「ばっ、ばっ、ばっかじゃねえの!?」
「要は、血が滴らなければいんだろうが」
あーまったく、だとか鉄の味は好かん、だとかぶつぶつ文句を垂れるロイに、何か違うと思ったけれども言ってもどうせ無駄だとエドワードは諦めることにした。
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