090817//メモログ/刀がほしいなあと思って書いた








振り下ろされた刀の、なんと鋭利なことか。それはなんの抵抗すら感じさせないままに、極めてまっすぐに肉を割いた。醜悪な面をした男の目玉が僅かに盛り上がり、大した言葉も残せぬまま地に崩れ落ちる。人斬り刀を振るった当の本人は何喰わぬ顔で飄々と、汗すらかかず涼しげに、残った残骸を見下ろすこともなく、刃の血を拭いその鞘に納めた。
「……怪我はないか、……」
血の海の中心に立ち尽くす小さな子供は、呆けたように刀の男を見上げていた。その瞳たるや、曇りや澱みひとつ見せない純真無垢な金の色を浮かべている。
「……口もきけないか?」
しかし男が話しかけども微動だにしない。まだ年端もいかぬ少年に、あまりにも衝撃が強すぎるものを見せてしまったかと、己の斬り方を少しばかり恥じる。答えぬなら仕方もないとそれ以上は何も言わず、男は子供に背を向けた。さっさと姿を眩ませてしまおうと思ったのだが、しかしそれは弱々しい力によって制される。何ごとかと振り返ると、白く、血の気のない小さな手が男の袴を掴んでいた。
「…………どうした、?」
ぱちくり、瞬きひとつして、子供は笑みを象った。
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