仕方がなかったんだ。 お前を守るって言ったけど、どうやら自分は相当な意気地なしだったらしい。どうしようもない。だって頭ではどうにかしなくちゃと思うのに、身体がまったく反応しなかった。 だってさ、銃だぜ? 普通に今まで生きてきて、銃なんか初めて見たっつーの。そりゃ怯えもするだろ。なあ、俺は間違ってんのか? 今だってそうだ。もう銃はどこにも見当たらないのに、未だ震えが止まらない。お前もそうだろ? きっとどっかの薄暗い部屋に監禁されて、銃突きつけられて、震えてんだろ……? じゃあ俺の気持ちもわかるよな。怖いじゃん。怖いだろ? いつ殺されるかわかんねーもん。 でもさ、誰が悪いのかって言ったら多分俺なんだ。けど本当に悪いのはいきなり襲ってきやがったあの男。なんでだろう。なんで俺らが。 「大丈夫ですか?」 頭を抱え込む俺の正面に、えらく美人な刑事が腰かけた。 「……刑事さん。俺、とんでもねーことしちまったんス……」 彼女は何も言わず、ただ俺の話に耳を傾けている。訥々と、俺は罪を白状する。 「あいつ……エドは、俺を守ろうとして……っ、俺の目の前に、」 目を閉じなくても蘇る。 和やかに過ごしていた日曜日、人生がまるきり変わった。部外者の、突然の乱入によって。 「俺、あいつを守るってあいつの弟に誓ったんス。でもできなかった。目の前に人を殺せる道具があって、それ見たら、もう手とか足とか震えまくりで、」 「銃なんて一般人には衝撃が強すぎますから、当然の反応です」 「けどあいつは俺を庇った! あいつはできたのに俺はできなかったんです! ……俺たち、何も悪いことなんてしてねぇんですよ? なのになんで……!」 「落ち着いてください」 「落ち着けるかよ、この状況で! そりゃあんたは他人だからな、わかんねぇだろうよ。俺の……っ、俺の気持ちなんて!」 「それでも落ち着いてください。大丈夫、優秀な人材を派遣しています。すぐに犯人は捕まるでしょう」 「それっていつだよ……いつのことを言ってんだよ!」 もう二日経っている。エドが連れていかれてから、もう二日だ。 「金ならいくらでもやる! 俺が一番怖いのは、銃でもなんでもなくて、ただあいつがいなくなることなんだ! あいつがいなきゃ、俺は……っ」 「ハボックさん」 「気休めなんかいりません。どうか、エドを助けてやってください。俺にはもう、あんたら以外頼れる人がいないんです」 あいつがいなきゃ俺はもっと駄目になる。 「あなたに言われずとも、被害者は必ず助け出します」 凛とした、彼女の声。嘘偽り何ひとつ感じない。 ごめん、ごめんな。俺はやっぱお前と一緒にいたいんだ。お前一人守れないような軟弱者だけど、それでもお前が何よりも大切だから。 あのときただ庇われるままだった俺を許してくれ。今俺にできることはお前の無事を祈ることだけだけど、でもお前が帰ってきたら今度こそ、お前を守りたいと思うんだ。調子いい奴って言われても構わない。誓いを二度も破る気なんて、俺にはないから、だから。 もしまだ俺を信じてくれるなら、きっと強くなれる気がするんだ。 君が叫んでいたのを僕は無視した 070228 説明とか詳しくしないで終わっちゃったよ。 でもハボックさんは断然庇う方だと思います。 |